スマートホームドア観察@町田駅(2017/09/03)
<町田駅4番線>
町田駅の4番線に設置されたスマートホームドア。
既存のホームドアと同等の強度を確保しつつ、軽量化を行うことにより、
ホームの大規模な補強が不要になり、工期の短縮・設置費用の削減が可能になっています。
ドアの開口幅は、既存のホームドアより800mm広げられた2800mmで、
前後750mmまでの停車位置のズレであればドアの開閉が可能となり、TASC(定位置停止装置)が不要になっています。
既存のホームドアのような「扉」ではありませんが、
黄色に着色された上部バー、中央バー、下部バーの3本が、ホームからの転落事故を防防ぎます。
扉間には、列車が所定の位置以外で停車した場合に、
車内から車外へ出るための「緊急脱出口」も用意されています(山手線などのホームドアにもあり)。
スマートホームドアの開扉状態がこちら。
上部バーは、開扉状態でもドアの筐体に完全に収納されないため、巻き込み事故が起こりにくいようになっています。
下部バーにも、申し訳程度(指数本分)の隙間が確保されています。
4番線でのスマートホームドアの設置状況ですが、
横浜方(最後尾寄り)2扉分については、ホーム端から離された位置に設置されています。
これは、E233系先頭車の乗務員室直後のドア位置が中間車と異なるため、
車両側とホームドア側のドア位置がずれてしまい、ホーム端にホームドアを設置することができないことによるものです。
山手線や京浜東北線では、E233系先頭車のドア位置に対応したドア(中間車部分とは別設計)が設置されていますが、
スマートホームドアではコストアップを避けるために、このような設置方法が取られています。
<4番線八王子方>
ただし、八王子方(先頭車寄り)2扉部分では、柱との干渉のため横浜方のような設置方法を採用することができず、
E233系のドア位置に対応したスマートホームドアが別途製造されるまでは、この部分のドアは設置されません。
ここからは、ドア筐体以外の設備について。
町田駅4番線には、山手線や京浜東北線のようなTASC(定位置停止装置)や連動装置が無いため、
他の駅では見ないような装置が複数設置されています。
まずは、横浜方(最後尾寄り)に設置されている装置から。
<停止位置検知装置>
まずは、列車が定位置に停車したことを検知する装置について。
山手線のシステムでは、連動用地上子/車上子を利用して列車の停止位置を検知しますが、
町田駅4番線では、横浜方(最後尾寄り)の端に停止位置を検知するセンサーが設置されています。
<定位置表示灯/全開ランプ>
車掌用ITVモニタの脇には、「定位置表示灯」「全開ランプ」が設置されています。
連動装置のある路線・車両では、前者は車掌スイッチ脇にランプが設置されていますね。
点灯時は、「定位置表示灯」が青色に、「全開ランプ」が赤色になります。
ランプの動作は以下の通りです。
<動作順>
①列車が到着し定位置に停車すると「定位置表示灯」が点灯
②定位置に停車した場合、ホームドアが自動で開扉し、完全に開くと「全開ランプ」が点灯
※「全開ランプ」点灯確認後、車掌が車両側から車両ドア開扉操作
③乗降終了後、車掌がホームドアの閉扉操作をドア筐体のスイッチで行い、完全に閉じると「全開ランプ」が消灯
※この後、車掌が車両側から車両ドア閉扉操作
④列車発車後、「定位置表示灯」が消灯
ホーム屋根からは、車両側とホームドア側の連携状態を表示するランプが吊り下げられています。
山手線・京浜東北線でも導入されている装置ですが、表示内容が異なり、「連携」「開自動」「分離」となっています。
(山手線では「連携」「ラッシュ(※)」「分離」の3つ)
現在、町田駅のスマートホームドアは開扉のみ自動で、閉扉は手動のため、
「連携」「分離」のいずれでもない「開自動」ランプが用意され、点灯しています。
連携装置が無い以上、「連携」ランプは不要に思えますが、
E233系6000番台へのTASC設置完了後に、連携装置を組み込む予定でもあるのでしょうか…?
※「ラッシュ」モードとは
ラッシュ時の閉扉の際に、乗り切れない乗客を後ろから押し込むため、
車両ドアとホームドアの連携を行わず、車両ドアの閉扉後、ホームドアの閉扉を別途行うモードのこと(開扉は連携する)。
続いて、八王子方(先頭車寄り)に設置されている装置について。
TASCがなく、運転士の操作のみで停止位置を合わせるため、
ホームドアの開扉が可能な停止位置を運転士へ伝える標識が設置されていました。
<運転士開閉表示灯>
また、ホームの先端部には、ホームドアの開閉状態を運転士へ伝える「運転士開閉表示灯」が設置されています。
<ドア開扉時>
ホームドアが閉まった状態では「○」が、開いた状態では「×」が表示されます。
また、先頭車のドア上付近にも、町田駅4番線特有の装置が設置されています。
先頭車一番前のドア位置に合わせるように、超音波センサーが設置されています。
このセンサーが、「車両側のドアの開閉を検知するセンサー」なのか、
「この位置に扉があることを検知するセンサー(他形式が停止しても扉は開かない)」なのかは不明です。
【9/8追記】
9/6(水)にJR東日本 横浜支社より発表されたプレスリリースによると、
八王子方(先頭車寄り)2扉のホームドアは、列車の停止位置に合わせてバーの収納位置が変化する仕様となるとのことで、
このセンサーは、先頭車一番前のドア位置を検知するものである可能性が高そうです。
JR東日本「町田駅スマートホームドア®の八王子寄り2扉を設置します」2017年9月6日
http://www.jreast.co.jp/press/2017/yokohama/20170906_y01.pdf
最後に、山手線や京浜東北線でも見かける装置について。
<駅係員向け操作盤>
駅係員向けの操作盤は、5号車1番ドア付近に設置されていました。
8号車(八王子方)の2扉分のホームドアが未設置のため、
その部分のみ、正常を示す緑色のランプが点灯していません。
アクリルパネル越しに見える、ホームドアの状態を示すランプですが、
「連携」ランプは用意されているものの、現時点では連携不可のため、文字が消されていました。
以上、町田駅で試験導入されている「スマートホームドア」の様子でした。
現状のスマートホームドアには連携装置が無く、あくまで試験導入といった印象ですが、
仮に、連携装置を導入すれば開閉にかかる時間が短縮可能である判断されれば、
他の駅に本格導入される可能性も十分ありそうです。
(勿論、試験導入の結果、簡易化されたドアが転落防止の機能を備えていると判断されることが大前提ですが)
その場合の連携装置は、導入路線によって、以下のような様々なパターンが考えられそうです。
・山手線や京浜東北線のような、地上子/車上子を使用した本格的な連携装置
・新小岩駅で導入される予定の無線連携装置
・町田駅のような開扉のみ自動で閉扉は手動
【参考資料】
Response「JR東日本、低コストのホームドアを町田駅で試行」2016年9月6日 16時39分配信
https://response.jp/article/2016/09/06/281325.html
JR東日本「新たな形式のホームドアの試行導入について」2016年9月6日
https://www.jreast.co.jp/press/2016/20160902.pdf
JR東日本「町田駅スマートホームドア®新たな試行開始日について」2017年5月25日
http://www.jreast.co.jp/press/2017/yokohama/20170525_y03.pdf
JR東日本「町田駅スマートホームドア®の八王子寄り2扉を設置します」2017年9月6日
http://www.jreast.co.jp/press/2017/yokohama/20170906_y01.pdf
j train 2017年4月号「考察 JR東日本の首都圏通勤電車 第8回 可動式ホーム柵(2)」P149~P153
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